MUFG ChinaとiVisionの共創 - 成果と挑戦

インタビュイー: 三菱日聯銀行(中国)有限公司 システム部長 鯨井義晴様
取材者: 上海菱威深信息技術有限公司 総経理 牧野国嗣

これまでのMUFG様とiVisionとの関係を振り返っていただき、御行にとってどのような存在だったかお言葉を頂けますでしょうか。

 ITの領域で、iVisionと我々のお付き合いが始まったのは 2009年です。あるシステム開発プロジェクトについて、御社より初めてご提案をいただき、そのプロジェクトへの参画をきっかけに本格的な協業がスタートしました。
 当時は、2007 年に現地法人化を果たしたMUFG bank(China)が、伸び行く中国経済の成長を取り込む体制を整え、事業の発展を一気に押し進めていた時期です。必然的にそれを支えるシステムインフラの整備が急務とされ、様々なシステム開発プロジェクトが立ち上がりました。質・量共に開発力の増強を通じて、MUFG ChinaのITのケイバビリティ確保が私共にとって大きな課題となっていました。
 まさにそのような時にiVisionとの協業を始められたことは、我々にとって非常に幸運でしたし、振り返ればMUFG bank(China)のこれまでの歩みには御社のようなIT パートナーの多くの支えがあったからこそと考えています。

これまでのなかでiVisionの印象が強く残るエピソードがございますでしょうか。

 10年を超える長い期間に数多くのプロジエクトを一緒に取り組んできた訳ですが、行内メンバーの多くが「ART」を挙げてくれました。
 「ART」は、勘定系システムへの入力を支援する事務フロントシステムです。弊行は開発から長い期間現在の勘定系システムを利用していますが、当時も記帳事務の正確性や効率性が大きな課題となっていました。Web ベースで構築された「ART」はレガシーをラップし、記帳に必要な項目の入力が1画面で完結できたり、申請·承認といったワークフロー機能が盛り込まれたり、高いUI/UX を通じて、事務コストやリスクを大きく低減させることができた画期的なシステムでした。
 また記帳以外にも、中国の金融当局への報告に必要な項目の入力システムとしての機能も持ち合わせ、データウェアハウスと連携させることで当局報告の正確性や自動化にも大きな改善を図ることができました。おかげで現場のユーザはもとより、当局からも高い評価を得ました。
 この「ART」の開発は、MUFG bank(China)におけるこれまでのシステム開発プロジエクトの中で、今でも最大規模のものです。2012 年からスタートしたこのプロジェクトは、フェーズを区切って段階的にレベルアップが図られてきましたが、ピークの 2013年頃には、行内のいたるところで検討会議が開かれ、システム・ユーザ、銀行・パートナー一体となって日々昼夜を問わずケンケンガクガクの熱い議論が交わされました。プロジェクトはマルチベンダー体制で進めましたが、iVisionはコアベンダーとして主要機能の開発や他社リードを担って頂きました。

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左:鯨井義晴様 / 右:牧野国嗣

IT/DX人材育成でもご支援させて頂きました。専門人材育成面でのお考えをお聞かせください。

 専門人材育成は非常に重要なテーマだと考えています。技術がオープン化、コモディティ化する中で、以前よりシステム開発が簡単にできるようになってきました。これは良い側面もありますが、一方で開発者のスキル低下も感じています。プロフエッショナルとしてコアとなる技術力・スキルを身に着ける機会が、OJT だけでは足りなくなってきていると危惧しています。iVisionとIT 研修プログラムの拡充を進めていますが、こうした活動を通じて、行内のIT プロフエッショナルを更に強化していきたいと考えています。
 またITスキルの習得は、システム部門に限ったものではなく、ユーザサイドにもITに対するリテラシー向上が重要です。要件定義やユーザアクセプタンステスト等、ユーザサイドとしてもシステム開発の手法を体系的に理解する必要があると感じています。ここ数年は企業の DX 化が一気に進んでおります。AI やビッグデータ、クラウド等、高度に実装されたデジタル技術が使いやすい、身近な形で利用できるようになり、アイデアさえあれば誰でもビジネスを劇的に変革するソリューションを生み出すことができます。DXを進めるうえで必要な資質は、 IT 部門にのみ蓄積されればよいというものではありません。全行的なDX人材の育成も大きな課題であり、その解決についてもお力を貸していただけることを期待しています。

これまでの活動を踏まえて、今後のiVisionへの期待をお聞かせください。

 弊行が直面している主要課題の一つはITリソースの最適化とそれに続く生産性の向上です。ITリソースの有効利用は経営からの要請も強く、我々としても高い意識で着実に取り組んでいく必要があると考えております。
 銀行は装置産業と言われるように、古くから ITを活用し、合理化や効率性を追求してきた業種です。また近年では、デジタル変革による業務改革、デジタルトランスフォームが事業競争力の源泉の一つとも言われています。一方で銀行としての社会公共性を考えれば、安定したシステムサービスの提供とシステム品質の維持も我々にとっての重要課題であります。
 それら多くの要請に対して、どうバランスを取っていくか、どの辺に軸足を置くのかというのが、弊行のみならず多くの企業における IT部門の課題ではないかと考えております。
 iVisionに期待したいところとして、多様な技術を有効に活用しながら、開発手法の標準化や簡素化、資産の共通化による再利用性の向上等、生産性を高める地道な取り組みを通じて、高品質と安定性の両立を実現するソリューションの提案を期待しています。

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左:鯨井義晴様 / 右:牧野国嗣

三菱日聯銀行(中国)有限公司

三菱日联銀行(中国)有限公司は、2007年に正式に上海に本部を設立し、現在、中国には14の支店と3つの出張所があります。